建築物の果たせる役割
~仮設住宅におけるコミュニティースペースを見て思うこと~

東日本大震災から2年を迎えつつある2013年3月8日、ホームズはみたび、東北地方を訪れました。

今回の踏査ルートは、津波の被害が大きかった名取市、仙台市若林区、 東松島市、石巻市、女川町、南三陸町、気仙沼市、陸前高田市の沿岸部です。
現地に立ってすぐ、彼が強く感じたのは復興の道のりの険しさだったそうです。沿岸部はやっとがれきの撤去が終わった状態で、集団移転などの計画もあるせいでしょうか、再建された住宅や地域をみることはあまりなかったそうです。
一方で公共工事の重機やトラックが頻繁に行き交い、他方、住宅の復興がおくれている、すなわち、その地域に住む住民のすまいと暮らしの再建が遅々として進んでいない・・・。そのような報道を現地に向かう前に何度か目にしてはいましたが、現地でその様子を目の当たりにし状況の厳しさを肌で感じました。

仮設住宅も何ヶ所か訪ねたそうです。この先どうなるか、先行きが不透明なままの生活が2年も続き、その場には 閉塞感のようなものが漂っているようにも感じたそうです。仮設住宅で暮らす方々にとって、将来の希望となるような目標や計画が一刻も早く望まれます。
そのような中にあって、女川町のグラウンドに建てられた坂茂氏設計のコンテナ仮設住宅は、さまざまな制約を創意工夫で乗り越えた、まさにものづくりの原点のような建築でした。家族間のプライバシーや収納の確保・居住性など、仮設住宅であるがゆえに後回しにされがちな、されど実際に住まうためには重要な要素が考慮されています。コンテナを市松模様に組む2、3階建てとすることで、平地が少ないという立地条件をクリアし、それにより生じた外部の空間に駐車場や集会所、日常的な買い物ができるマーケット(坂本龍一氏寄贈)、様々な教室ができるアトリエ(千住博氏寄贈)を配置しています。住環境に加えて、コミュニティーの形成までも促すような工夫が施されていました。

坂茂氏設計のコンテナ仮設住宅(女川町)

コンテナ仮設住宅(女川町:坂茂氏設計)

マーケット(女川町:坂本龍一氏寄贈)

マーケット(女川町:坂本龍一氏寄贈)

その他、希望の家(名取市、槇文彦氏設計)、みんなの家(東松島市、妹島和代氏設計)、こどものみんなの家(東松島市、伊藤豊雄氏設計)、みんなの家(陸前高田市、伊藤豊雄氏設計)など、仮設住宅や公共施設の一角にさまざまな意匠をこらした集会所が 徐々に建築され、住民の方々の憩いの場として機能していました。

希望の家(名取市)

希望の家(名取市:槇文彦氏設計)

みんなの家(東松島市)

みんなの家(東松島市:妹島和代氏設計)

こどものみんなの家(東松島市)

こどものみんなの家(東松島市:伊藤豊雄氏設計)

みんなのいえ(陸前高田市)

みんなのいえ(陸前高田市:伊藤豊雄氏設計)

建築は建物を提供するだけではなく、そこに人が集うための空間をも提供するものだと再認識ができた調査の旅でした。

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