木の建築フォラム講習会「伝統木造建築」講座
木造住宅の外皮平均日射熱取得率性能、日射遮蔽の考え方と取組手法

ホームズが外皮性能計算に初めて取り組んだのは、1998年頃。それからかれこれ15年以上たつが、昨年(2013年)の平成25年省エネ基準の改正で何が変わったのかをおさらいしてみたい。
大きなところでは、地域区分で従来のⅠ、Ⅳ地域が細分化されたことと、性能基準が推奨される形となり一次エネ ルギー消費量も確認することになったというところ。それと少し細かい話になるが、従来のQ値がUA値に変わったこと。 UA(外皮平均熱貫流率)は建物全体からの合計熱損失量を外皮表面積で除することになった。そのほかには、仕様規定で適用条件(開口率)が設けられたこと。

さて、これらの改正に深くかかわられた砂川雅彦氏の話を、木建築フォラムの講義で聞く機会に恵まれた。砂川氏は断熱が広まりつつあった1980年ごろからシミュレーションによる温熱環境の分析評価にたずさわってこられたパイオニア的存在だ。
氏は、終始、外皮計算を性能規定で行うことの簡単さを熱弁されていた。確かに、構造と比較すると外皮計算は易しい。しかも今回の改正で特別難しくなったことなど何もない。
けれど、実務で行うには手間がつきまとう。
まず、面積計算。お手本に出てくるような簡単なプランなら暗算でもできるだろう。しかし、ななめ壁があったり、屋根が複雑だったりした場合、途端にパンクする。
そして、外皮計算で必要となる面積。熱的境界を求めるが、工法によって、どこからを算入すればよいかなどが紛らわしかったり、構造の検討用の面積と混同することも多い。要注意だ。だが、こうしたところはCADソフトが得意とするところ、任せればいいと思う。
それから、熱貫流率計算。ここは断熱を考えるうえで一番重要なポイントた。ただ計算するのではなく、各部位の断面構成について、構造的な観点(耐力や防火)と断熱的な観点で考慮が求められることも少なくない。ここも、CADソフトを使って構造検討とシームレスに行うと設計そのものに集中でき、その上、手戻りを起こさないで済む。そう、これからは構造と断熱を並行して設計を進めることが当たり前になってくる。

ところで、講義でも紹介されたが、国から無料の外皮計算EXCELシート改訂版が提供される。あちこちの講習会でこれを利用することが強く推奨されている。扱う棟数が少なく外皮計算だけできればいいというのであれば事足りるかもしれない。だが、本当に良い設計をするための環境(ソフト)、つまり、構造と断熱を総合的に検討できるソフトを使わずに、わざわざ構造検討と縁をきって外皮計算だけをするEXCELを使うことが推奨されているのには疑問を感じずにはいられない。
自動で計算できるものはソフトにやらせればよい。しかも、整合した図面が出せれば、評価機関からの指摘にも対応が早い。“無料ソフト”のもとに無駄な汗をかく必要はないと思うのだが。

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