なぜ、『直下率』だけがクローズアップされるのか

12月 21st, 2016

熊本地震に関する国交省の見解をふまえた、今後の木造の地震対策が一般の方向けのテレビ番組等でも紹介されるようになりました。

そこで、疑問なのが、どの番組でも、口をそろえて、『重要なのは直下率』と結論づけていることです。しかも、その重要な直下率が建築基準法で規定がされていない。と。

あながち間違いでもないですが、これは構造を知る建築士であれば、誰しも疑問を感じると思います。なぜなら、本来の構造計算である許容応力度計算や、あるいは、2000年に規定された住宅性能表示制度による耐震等級の床倍率が規定される以前では、確かに、柱や耐力壁の直下率が重要でありました。しかし、現在では、直下率より床の水平構面としての剛性を検討することのほうが、工学的見地からはるかに重要であることが示されています。

9月に発表された国交省の熊本地震に関する総括も以下の3点に要約されており、耐震等級の検定が有効であることを明確に示しています。
・木造住宅については、旧基準の建物について耐震化が一層重要である
・現行基準法は倒壊・崩壊の防止に有効である。
・より高い耐震性能を確保するためには住宅性能表示制度の活用が有効である。

たしかに、『直下率』は上下階の柱の位置関係を確認するものですから、非常にわかりやすい考え方ではありますが、耐震等級の考え方は、こうしたものを遥かに上回る精緻な検討を行う方法であり、構造検討を担当する建築士であれば当然行うべき検定項目といえます。意識のある建築士や工務店は当然取り組んでいます。この耐震等級についても、許容応力度計算というさらに詳細な検討を行うことも全く珍しくありません。そのぐらい、阪神淡路大震災以降は、木造住宅に関しても工学的なアプローチが飛躍的に向上しています。

しかしながら、ローコスト・デザイン重視の住宅市場で、見えない部分である構造に関する設計コストは軽視されがちであることも、また、真実であり、耐震等級は検討したいと建築士が考えても、やらせてもらえない、そうした話も聞きます。

テレビ番組は消費者に「『直下率』さえ確保されれば安全である」といった乱暴な理解を伝えているのではないかと懸念しています。大地震が複数回あっても耐える住宅のためには、『最低でも耐震等級3』、これが熊本地震の教訓です。確かに、それには設計コストが増えますが、生活の基盤である住宅を失う場合のコストを考えれば、微々たるものといえます。

これまでは、建築関係者のみなさまにはお伝えする機会を設けてきましたが、今後は一般の方にも、このことをお伝えしていかなければならないと考えています。この地震大国日本において、地震で損傷を受けない住宅をつくるため、生活を失わないために覚えておくべきことは、『直下率』ではなく、『耐震等級3』なのです。

熊本地震調査からの教訓、『最低でも耐震等級3』

9月 28th, 2016

2016年4月、熊本地震が発生しました。阪神淡路大震災を越える、多くの木造住宅の倒壊被害が発生しました。
このことは、既存住宅の耐震診断・補強、そして、新築住宅の耐震性の向上を事業目標として30年やってきた私には、非常にショックなことでした。これまでも、住宅の被害状況については、実際に自分の目で見ることが大切と考え、ほとんどの大地震後に現地調査に入ってきましたが、益城町の景色はこれまで見たことのない広範囲にわたる壮絶なものでした。住宅のみならず、道路もうねり、人々の生活がほんの28時間、でもその短い間に震度7を2回、震度6強を1回を受けたことで一変したことがわかりました。私は足が動かなくなるまで現地を踏査し、大量の写真を撮影しました。なぜ、これほど倒壊したのか、なぜ、新しい住宅まで倒壊したのか、木造住宅に携わってきた者として、どうも納得がいかない。それならば、とことん分析をして、ホームズ君ソフトを活用して住宅設計を行っていただいているユーザー様にも広く公開すべきとの使命も感じていました。

つくばに戻り、大量の写真の整理に追われる中、雑誌編集者との縁もあり、倒壊物件の図面も大量に拝見させていただきました。さっそく、ホームズ君ソフトを使って、様々な条件設定を行い、問題点の確認を進めました。スタッフたちと、何度も何度も入念に見直ししながら、細かい検討を慎重に進めました。どの物件もお施主様にとって大切な住宅です。一つたりとも間違いがあってはなりません。そして、ようやくまとまったものが、
『熊本地震 倒壊分析マップ』(googleストリートビューを活用して、倒壊前写真と倒壊後写真が比較して見られます)
『熊本地震 調査報告レポート』(被害程度、要因、対策、提案を整理)
です。

その後、8月には日本建築学会災害委員会の報告、そして、9月には国交省からの報告書が発表されました。その国交省の報告書の総括は、以下のとおりでした。
木造住宅については、旧基準の建物について耐震化が一層重要である。
・2000年に導入した現行基準は倒壊・崩壊の防止に有効である。この基準に適合していない住宅にも耐震化の取り組みが必要である。
・耐震等級3は大部分が無被害だった。今後、より高い耐震性能を確保するためには住宅性能表示制度耐震等級の活用が有効である。

つまり、”現行基準法は倒壊・崩壊を防ぐだけのレベルとしながらもその有効性を認め、消費者に高い耐震性を示す際には選択肢として耐震等級を示すとよい”ということですが、どうなのでしょうか。
いつ大地震がどこで起きても不思議でない日本で、生涯、最も高い買い物であり生活の基盤を取得しようとするとき、倒壊・崩壊しないだけの住宅でよいと考えている消費者がいるでしょうか。

こうしたことに、多少の苛立ちを感じながら、この被害を建築士の立場でどう考えていくべきなのかをみなさんと共有する機会として、「日本の木造住宅を強くしよう~熊本地震被害に学ぶ~」と題したセミナーを秋葉原の大ホールで開催しました。そして、このセミナーで、住宅性能表示制度の耐震等級の規定に携われた大橋好光先生、東京都市大学教授)がおっしゃられた言葉が印象的でした。
「木造の構造をずっとやってきて、今回のことで”木造は弱い”といった間違った認識が広まるのが残念です。耐震等級を確保する設計を行えば、大地震にも十分に耐えうる強い木造住宅が建設できる。」

地震に限らずですが、災害への関心は喉元を過ぎるとすぐに薄れてしまいますが、地震はいつどこで発生しても不思議ではありません。
今回の被害の教訓として、『最低でも耐震等級3』を伝えていくことを次の使命としています。

セミナーの詳細は、次のページをご覧ください。

伊礼智氏設計『つむじi-works2015』、シミュレーションと実測で性能を評価

9月 25th, 2015

この夏、雑誌「建築知識ビルダーズ」の記事のために、建築家伊礼智氏の『つむじi-works』の断熱性能の評価を行うことになりました。伊礼氏といえば、今もっとも輝いている住宅建築家の1人。
著書『「小さな家」70のレシピ 』(エクスナレッジムック)はあっという間に増刷されているほどです。
その伊礼氏設計の『つむじi-works』を相羽建設株式会社様がモデルハウスとして東京都東村山市に施工。
この住宅を評価させていただくということになり、当社としても万全の体制で臨むこととなりました。
つむじi-works外観
今回の測定にあたって、伊礼氏と相羽建設株式会社迎川専務と打合せを行いました。
人気の伊礼氏、もしかして気難しい方なのでは?との心配をよそに、その物腰は非常にソフトで、評価予定の項目の事前説明についても、ウィットに富んだコメントで盛り上げてくださいました。
また、住宅に対する愛情が非常に深く、一つ一つの細かい設計について、丁寧にわかりやすく解説してくださいます。
当社のソフトであるホームズ君「構造EX」で断熱性能であるUA、ηA、および設備性能と燃費性能を計算しました。さらに、2015年10月発売予定のホームズ君『すまいのエコナビ』で、昼光利用や日射熱の取得と遮蔽効果、通風性能、室温予測などを行うこととなりました。

この『つむじi-works2015』はUA値=0.44と断熱等性能等級4の基準を大きく上回る高断熱住宅です。
夏期の日射取得率もηA=1.2と小さく、さらに太陽光発電、空気集熱式ソーラーシステム、太陽熱給湯を採用しているため一次エネルギー消費量も57.6GJ/年と低炭素基準の68.7GJ/年を楽々クリアしています。

さらに、モデルハウスということもあり、窓まわりには様々な工夫が提案されています。庇や木製ルーバー、障子など、季節に応じた日射遮蔽ができるようになっていて、1階、2階にそれぞれ1台のエアコンだけで過ごせるようになっています。

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せっかくですので、設計値の評価だけでなく実測してみたいと申し出たところ、なんとあっさりOKをいただきました。机上の計算値からの性能イメージと実際の性能値を、設計者自身がリンクさせていくことは非常に大切なことだ、と伊礼氏。この物件はモデルハウスとして日々お客様が来場されている物件ですので、伊礼氏設計のインテリアに不釣り合いなものを置くことが果たして許されるのかという心配はすぐに払しょくされ、計測開始!

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計測は梅雨明けの7月の暑い時期に行いましたが、さすがに高い性能値を満たしている設計ですし、しかも相羽建設様の丁寧な施工によって、気密も抜群。当然のごとく、室温の変動は小さく、高気密高断熱を実証する計測実験となりました。また、同時に照度の確認も行いました。伊礼氏いわく、ご自分の設計した建築について、「暗い」と指摘されることがあるようで、常々それを気にされている模様。「明るすぎず陰影に落ち着きを」というのが伊礼氏の光の設計コンセプトですが、実際に測定してみると、十分な照度がある中で見事に陰影が表現されていることが確認できました。しかも、窓まわりに仕掛けられた多くの工夫には、住まい手のニーズを細かくカスタマイズできる要素技術が盛り込まれていると感じました。

とかく、意匠設計を重んじる方は性能に疎いようなことが言われていますが、とんでもありません。
意匠と性能、ハイブリットに融合されており、”性能の先の心地よさ”をまさに追求された、『つむじi-works』、これからも伊礼氏の活躍に目が離せませんね。

※本評価に関する詳細は、「建築知識ビルダーズ No.22」(株式会社エクスナレッジ発行)に掲載されています。

警報も鳴らず、長~く大きな横揺れでヒヤっ。 その理由の”深発地震”とは?

6月 11th, 2015

去る2015年5月30日、土曜日の20時23分、多くのみなさんも感じられたと思いますが、長~くて、おおきな横揺れがありました。
あれ、いつもより長くない?というところで、念のために火の元や家具を確認された方も多かったのではないでしょうか。
いつもとは違う・・・、不安を感じさせる揺れでした。

さて、その地震の正体は・・・、すでに報道もされていますが、ここにあらためて。

まず、マグニチュード 8.1!
気象庁の観測史上、歴代2位の規模だそうです。
こんなにも規模が大きかったのに、緊急地震速報(警報)も鳴りませんでした。
その理由は、今回の地震の特徴で、震源がなんと東京-青森の距離にも匹敵する682Kmと非常に深かった。気象庁では、震源の深さが150kmを超える場合には、緊急地震速報を発表しないシステムなんだそうです。

2011年の東北大震災と数字で比較してみます。

東北大震災(2011年3月11日) マグニチュード9.0 震源深さ  24km
今回の地震(2015年5月30日) マグニチュード8.1 震源深さ 682km

深さがオーダーで違います。この深さ、防災科学技術研究所の岡田義光理事長は「地球内で起こり得る場所としては最深部に近い」とコメント。

そんな深い(遠いところ)で発生したにも関わらず、東京都や神奈川県では震度5強が観測されました。これは異常震域と呼ばれる現象で、震源深くで発生した地震波が、固い太平洋プレートのなかを減衰せずに陸地側に伝わるからとのことです。また、長周期地震動が観測され、都内の高層ビルではエレベーターが停止するなどの状況もありました。大きな被害がなくて何よりでした。

今回、気象庁は、緊急地震速報(警報)について、「震源が浅い地震であれば、震源からの距離が遠くなると震度が弱くなるという性質を使い、各地の震度を計算し緊急地震速報を出す。しかし、深さが150キロを超える地震であれば、震源からの距離が遠くなると、震度が弱くなるという予測式では精度よく計算できなくなる」と話し、「現在の技術では限界がある」と記者会見しました。

大地震は起こってほしくないですが避けられない。ただし、私たちには”備える”ことができます。
最近、火山活動や地震活動が最近、にぎやかなせいか、ホームズの会社にも耐震診断のお問合せが増えています。
耐震診断と補強工事で、お手伝いをしていきます。

参考:平成27年5月30日20時24分頃の小笠原諸島西方沖の地震について (気象庁)
http://www.jma.go.jp/jma/press/1505/30b/kaisetsu201505302230.pdf

木の建築フォラム講習会「伝統木造建築」講座
木造住宅の外皮平均日射熱取得率性能、日射遮蔽の考え方と取組手法

6月 30th, 2014

ホームズが外皮性能計算に初めて取り組んだのは、1998年頃。それからかれこれ15年以上たつが、昨年(2013年)の平成25年省エネ基準の改正で何が変わったのかをおさらいしてみたい。
大きなところでは、地域区分で従来のⅠ、Ⅳ地域が細分化されたことと、性能基準が推奨される形となり一次エネ ルギー消費量も確認することになったというところ。それと少し細かい話になるが、従来のQ値がUA値に変わったこと。 UA(外皮平均熱貫流率)は建物全体からの合計熱損失量を外皮表面積で除することになった。そのほかには、仕様規定で適用条件(開口率)が設けられたこと。

さて、これらの改正に深くかかわられた砂川雅彦氏の話を、木建築フォラムの講義で聞く機会に恵まれた。砂川氏は断熱が広まりつつあった1980年ごろからシミュレーションによる温熱環境の分析評価にたずさわってこられたパイオニア的存在だ。
氏は、終始、外皮計算を性能規定で行うことの簡単さを熱弁されていた。確かに、構造と比較すると外皮計算は易しい。しかも今回の改正で特別難しくなったことなど何もない。
けれど、実務で行うには手間がつきまとう。
まず、面積計算。お手本に出てくるような簡単なプランなら暗算でもできるだろう。しかし、ななめ壁があったり、屋根が複雑だったりした場合、途端にパンクする。
そして、外皮計算で必要となる面積。熱的境界を求めるが、工法によって、どこからを算入すればよいかなどが紛らわしかったり、構造の検討用の面積と混同することも多い。要注意だ。だが、こうしたところはCADソフトが得意とするところ、任せればいいと思う。
それから、熱貫流率計算。ここは断熱を考えるうえで一番重要なポイントた。ただ計算するのではなく、各部位の断面構成について、構造的な観点(耐力や防火)と断熱的な観点で考慮が求められることも少なくない。ここも、CADソフトを使って構造検討とシームレスに行うと設計そのものに集中でき、その上、手戻りを起こさないで済む。そう、これからは構造と断熱を並行して設計を進めることが当たり前になってくる。

ところで、講義でも紹介されたが、国から無料の外皮計算EXCELシート改訂版が提供される。あちこちの講習会でこれを利用することが強く推奨されている。扱う棟数が少なく外皮計算だけできればいいというのであれば事足りるかもしれない。だが、本当に良い設計をするための環境(ソフト)、つまり、構造と断熱を総合的に検討できるソフトを使わずに、わざわざ構造検討と縁をきって外皮計算だけをするEXCELを使うことが推奨されているのには疑問を感じずにはいられない。
自動で計算できるものはソフトにやらせればよい。しかも、整合した図面が出せれば、評価機関からの指摘にも対応が早い。“無料ソフト”のもとに無駄な汗をかく必要はないと思うのだが。

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木の建築フォラム講習会「伝統木造建築」講座 高断熱高気密補強による古民家復建

11月 16th, 2013

古民家再生のスペシャリスト、安井妙子氏の講義を受けてきたホームズ。
「正直、古民家をどうやったら高断熱、しかも、高気密にできるんだろう」と半信半疑のホームズでしたが、たくさんのすばらしい実績に圧倒されました。

講義では、断熱に関して、外断熱を推奨されていました。
屋根から軒、そして壁、さらに基礎までをぐるーっと隙間なく厚ーく断熱。

と、文章では簡単に書けますが、古民家ならではのさまざまなイレギュラーな条件の連続の中で、納まりを都度工夫し、それを大工が丁寧に施工する。
まさに、芸術品の修復のごとくです。改築コストは目が飛び出る金額でしたが、 芸術品ですからプライスレスです。 施工後には、温度計測や電力量測定をして、効果を把握。改善を十分に読み取れ るものでした。

構造についても、曲がっている柱や勾配の違う屋根面の合わせ、いつの世代かに 切られたのだという大黒柱を補うなど、ウルトラCの連続のストーリー。
安井妙子氏は、古民家の美しさに魅了されて、この仕事に就かれたそう。 古民家は寒いから壊されてしまう、ならば、そこを克服できれば美しい建築物を 残せるという信念で、仕事を続けられてこられたのだそうです。 2020年の省エネ義務化に向けての意見を質問されると、安井氏は 『伝統的建築に関する議論はまだ不十分である。コストはかかるだろうが技術的 には十分断熱できる。普及していく方法を考えていくのは、みなさんの世代に任せたい』 と締めくくられました。

来年、木の建築フォラムでは、公開フォーラム『伝統的木造建築と省エネ』(2014 年3月15日予定)でパネルディスカッションも開催されるとのこと。 平成25年省エネ基準が住宅でも去る10月に施行となりましたが、ここから1年半。 完全移行に向けて、住宅断熱に関する議論が本格的に高まりそうです!

下馬の集合住宅 現場見学会

9月 4th, 2013

都心で建設中の木造耐火建築物の5階建て集合住宅が現場見学会を開催!それを聞いたホームズは早速現場見学会に参加したそうです。

建築設計は、KUS一級建築士事務所、構造設計は、東京大学生産技術研究所 (腰原幹雄先生)、桜設計集団一級建築士事務所が担当。施工は大和ハウス工業。 見学会開催時の工事状況は、構造体が一通り組み上がり、断熱材がところ どころに充填された状態でした。 見学会の現場に東大の腰原先生がいらっしゃったので話をお聞きしたところ、この建物は保有水平耐力計算で構造検討がなされたとのこと。可能ならば構造計算書を一度見てみたいものです。

この建物の特徴は1時間耐火建築物でありながら、外周には無垢材の斜材が格子状にあしらわれています。「耐火上大丈夫かな」と思ったのですが、木斜格子は 水平力しか負担しないため耐火被覆をしないのだそうです。 これにより外壁面全体がルーバー付の大開口のようになっており、外部からの採光はそれなりに取れていました。もう少し格子の隙間がほしいところですが、強度を保つには必要最小限の配置なのでしょう。 また、これだけの木斜格子を一つ一つ精度高く施工するのも大変です。やはり専用の金物が用意されていて、部材開発にアイデアと時間と費用を結集した実験プロジェクトであることがうかがえました。

もう一つ構造的な特徴として、水平構面をマッシブホルツスラブ(厚さ120mm の集成材のパネルを2層)構法を採用しているので梁は存在しない点が挙げられます。 耐火のため被覆されてしまうので、木質感がだいぶ薄れてしまうのは残念です。

構想から今年で10年という長期間にわたり今年竣工を迎えます。 竣工後もぜひ見学したいと思うホームズなのでした。

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建築設計製図特論課題「夫婦と子供二人:大きな吹抜のある家」

7月 30th, 2013

ホームズは現在、T大学の大学院に在学中。建築設計製図特論のN先生から、木造住宅の設計課題がでました。建築にかかわる学生なら誰もが経験するこの課題に、○年ぶりにホームズも取り組みました。
設計条件は、北面と東面を道路に接する角地、家族構成は40代共働き夫婦と子供二人(中学2年生男子と小学5年生女子)、木造2階建ての在来木造軸組構法(無垢材の軸組を用いて構造の構成が見えるような住宅が望ましい)、延床面積130㎡程度です。せっかくなので、長期優良住宅の認定基準を満たすことも条件に加えました。提出物は、各種図面(配置図・1・2階平面図・断面図・立面図・床伏図・小屋伏図など:1/50)と模型:1/100です。

ホームズのプランは、共働き夫婦と思春期の子供たち、一緒に過ごす時間が少ない中で共有できる空間をメインに考えたものだそうです。北面・東面は道路沿いのため開放性を抑え、庭に面した南面には大きな開口と吹抜をもうけました。これにより明るい大空間のリビングが実現しました。
長期優良住宅の設計と図面作成には、ホームズの会社の「構造EX」を使用しました。このプランの目玉である大きな吹抜を実現させるために、床倍率で苦労をしたようですが、リアルタイムに計算結果が表示されるので効率的に作業をすすめていました。また、3D画像でプランを確認できるので、常に完成イメージを意識できていたようです。「構造EX」のデータはDXFデータにも簡単に変換できるため、JW-CADと連動させて提出図面の細かい表現にもこだわることができました。

その後、模型作成。細かい作業の連続となり、数日間はスチレンボードやカッターとの睨み合いが続きました。昔確かに杵柄は取ったはずと思いつつ、気がつけば夢中になっていて、スリット階段・表しの梁など、1/100スケールにもかかわらず、つい細かい部分までつくり込んでしまったそうです。

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横浜・港北ニュータウン「サウスウッド」工事見学会

4月 30th, 2013

2013年4月、先月の熊本に引き続き、今度は横浜の港北ニュータウンに今秋オープン予定の大型商業施設「サウスウッド」の工事見学会に参加した、ホームズ。

大型創業施設自体は今やどこででもお目にかかれますが、この施設は「平成23年度木のまち整備促進事業」に採択されたプロジェクトで、日本初の耐火木造の梁と柱を採用した木造ラーメン構造の大規模商業施設だそうです。

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これまでは防火地域での木造大規模建築は法規的に困難でしたが、柱や梁に、カラマツ集成材の荷重支持部と燃えしろ層との間にモルタルの燃え止まり層を設けた3層構成の耐火集成材を採用することによって耐火性能を確保し、大規模商業施設への導入が実現したのです。

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また、今回の見学会では見られませんでしたが、「木製両面ガラスフラッシュ建材」という新しい建材も使われるとのこと。国産スギ間伐材の小角材の両面をガラスで挟み、シリコーン素材を用いた新開発の技術で封着することで生じる空気層によって断熱性と遮音性を確保する新建材だそうです。

このような駅前の複合商業施設において木材を見える形で使用することで、多くの人々の目に触れる機会が増え、建築物への木材利用の普及が進んでいくことを期待するホームズなのでした。

ホームズ、鹿北小学校を見学 in 熊本

3月 30th, 2013

2013年3月、T大学の建築事例研究実習で熊本を訪れたホームズ。 今回の見学先は、熊本県山鹿市の鹿北小学校です。 近隣の3つの小学校が統合されて新しく竣工する小学校だそうです。 緩やかに傾斜する地形をいかして、隣接する鹿北中学校や公共施設とつながっているので、 さながら地域の人々が小中学生を育む『まちの学校』のようです。

木造+RC造の平面混構造2階建ての校舎は、天井が高く開放的。天井はトラス構造です。木造の間にRC造のコアを挿入することにより、全体を4つの棟とした大規模木造小学校となっています。 外観も屋内も木の温かみを感じられる造りになっています。

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校舎はロの字型となっていて回遊性があり、ぐるぐる回りたい小学生児童にはうってつけの設計です。 一日の多くを過ごすクラスルームは南に面していて、暖かく過ごせそうです。 風や光が通り抜ける中庭やピロティーでは、学校内にいても周辺の豊かな自然を感じることができます。 近頃の小学生はこんな素晴らしい環境で勉強できるのですね。うらやましい!

鹿北小_2 鹿北小_4